第4回 話を聴いてくれる人がいなかった
声をかけたいのに、いつもためらってしまった。
医師や看護師は懸命に治療にあたってくれていたが、皆いつも忙しそうだった。ナースステーションの前を通るたびに足が止まり、「これ以上時間を取らせてはいけない」と思ってしまう。
当時、病棟にはソーシャルワーカーや心理士もおらず、誰にこの気持ちを話したらよいのか分からなかった。
本当は、怖い、つらい、どうしたらいいのか分からない――その気持ちを誰かに聞いてほしかっただけだった。正解が欲しいのではなく、「一緒に考えよう」と言ってくれる人がほしかった。
亡くなる三日前、担当の看護師さんが「ゆっくり話せなくてごめんね」と声をかけてくれた。その一言に、初めて自分が“話したかった”のだと気づいた。
病院では、弱さを出してはいけないような気がして、泣くのは廊下の隅だった。強くいなければと自分に言い聞かせていた。